魔法の言葉
新しい居住できる星を得、フロンティアの修繕や星の調査…やることはたくさんある。
そんな開拓者達を支えるのは歌姫達の歌。
「そういえばシェリルさんて…結局パイロットの資格、とれたんですよね!?」
ランカは、またアイドルとしてベクタープロモーションで働いていた。
シェリルもベクターに厄介になっており今日は一緒の仕事だ。
「ふふん♪当然よ」
シェリルは、この星が見つかる前、美星学園のパイロットコースに在籍しており実際にバルキリーに搭乗、運転したこともある。
「凄いなぁ、シェリルさん…アイドルやりながらパイロットの資格までとっちゃうなんて」
「ランカちゃんだって出来るわよ。それに見合う努力を惜しまなければ、なんだってね」
シェリルは得意気に笑みを浮かべた。
ランカに『凄いなぁ』と言われて万更でも無いらしい。
「…!ありがとうございます、シェリルさん!…でも私がとりたいのはパイロットの資格じゃなくて…」
「なぁに?」
「…サイボーグを、お兄ちゃんをメンテナンスできる資格なんです!」
「!!?」
シェリルの魔法の言葉に乗せられその気になったランカは努力(勉強)を始めたものの…。
「ふぇ〜やっぱり難しいよぉ〜」
これでもまだ入門の入門くらいの簡単な部分だ。
ギャラクシーでは珍しくもないインプラントやサイボーグの研究はフロンティアでは禁止されているから、ブレラのメンテナンスはSMS経由でLAIが試行錯誤でやってくれてる状態。
「まずはルカ君の使ってる用語が完璧にわかるようになりたいなぁ…」
ルカはブレラの定期検査の度に、その身内であるランカに内容を詳しく説明してくれるのだが、ランカには会話のレベルが違いすぎて逆に意味がサッパリわからない、ということが少なくないのだった。
「なりたい、だけじゃだめ…なるんだ…!頑張れ私っ!」
「…ランカ…」
「あ、お兄ちゃん!」
「…良いんだ俺のためにそんなこと」
「!?」
こそっと様子を伺っていたブレラはランカにそう話しかける。
自分の自惚れでなければ、ランカがこんなことを始めたのは間違いなく自分の影響だった。
それまで人並みぐらいにしか機械等に興味が無かったはずのランカからは、考えられない行動だ。
「俺は、お前の、その気持ちだけで嬉しい」
「も、もぉ!無理だと思ってるんでしょ!?」
ブレラの予想に反し、ランカは心外だったようでプンプン怒りだす。
「私だってルカ君達の使ってる言葉、そんなに噛み砕いて言ってもらわなくても、わかるようになってきてるんだよ! …最初の頃にくらべて、だけど…」
怒りながら、だんだん小声になっていく。
「なぜお前がそこまでのことを?」
ランカは歌のことだけ考えていられれば幸せ、なのではなかったのか?ブレラは不思議だった。
「…あのね…また怖い夢、見たの…」
ランカは俯き、その内容を話し始めた。
「…お兄ちゃんがある日いきなり動かなくなっちゃって、 LAIの誰も修理することが出来なくて、 フロンティアの技術が進むまでコールドスリープさせることになって、 それ待ってるんじゃいつ会えるかわからないから私は自分で直すしかないって思って、 必死に勉強して、 お母さんみたいな学者になって、 アルト君と結婚して、 そしてやっとお兄ちゃんを修理するの」
「待て、最後なんて言った」
おとなしくランカの見た夢の話を聞いていたブレラだったが、ある一点が引っ掛かった。
「え?だから私がお兄ちゃんの修理して、ちゃんと成功するんだよ!お兄ちゃん眼を覚ますの」
「違う、その前に言った…アルトと…!?俺が起動停止してる間にそんなことは許さん」
「…夢の中のお兄ちゃんも、起きた後で同じこと言ってたよ…」
ランカは呆れながら言った。
「それでアルト君と決闘するってバルキリーで戦い始めて、私が『やめてー!』って 叫んだところで終わりだった」
「…ランカ。心配するな。俺がお前を残して停止するなんて、そんなこと絶対にしない」
たった今、絶対に停止できない理由ができた。
「大丈夫…私、お兄ちゃんのこと信じてるよ。 でも…イザって時とか、応急措置になるメンテくらい、私が出来ちゃったら楽になるんじゃない?」
首をかしげるランカ。
そんな夢みたいな日は限りなく遠い気がしたが…それを言ったら、昔のランカにとってシェリルは遠い人であったのだし。
諦めなければ可能性は0じゃない、ということをランカは知っていた。
「それに、私、結婚なんかしない。出来ないよ…」
「……!!!……」
「…もし仮にしたくなったら、ちゃんとお兄ちゃんに相談して会ってもらって、認めてもらってからにするよ!」
「……(認められる気がしない)……」
そもそも結婚しないでほしい、と思ったブレラはしょんぼりする。
が、ランカはブレラの手をとって魔法の言葉を言った。
「…お兄ちゃんは私の翼だから。心配するのは当たり前!」
「ランカ……!!」
嬉しくなるブレラだったが。
「……だが…お前にその、俺の中身を見られるのは、その、何というか… うまい言葉が見つからないんだが……」
モヤモヤしていた。
「お兄ちゃん、私に修理されるのイヤ?……私にいじられるの……そんなに不安?」
確かに自分はドジッ娘だ。娘娘バイト時代…いや、それ以後だって。
そんな自分が修理してあげると言っても、さぞかし不安だろうと考え…うなだれるランカ。
「……そうじゃない」
たぶんランカの不安とブレラの不安は厳密に言うと、同じ意味じゃない。
もう昔と変わってしまった部分をランカに直視されたくないという恐れ。
だが、オズマによって自然に普通に育てられたランカにそんなブレラの複雑な気持ちがわかるハズもなく。
ランカは兄から否定の言葉が聞けたのでホッとした。
「じゃあ、決まり!私、頑張るからね!お兄ちゃん」
「……」
記憶を取り戻すためにこの身体になって。
ランカを守るためにこのサイボーグとしての力を使うのだと思えばこそ…自分は救われる気がした。
それなのにランカは今以上に自分を助けたいのだと言ってくれている…。
悶々としていたブレラだったが、結局ランカが自分を大切に想ってくれている嬉しさが勝って、ランカをひとしきり抱きしめた。
まるで彼女の母親である蘭雪の在りし日ように、白衣を来たランカが資料を片手にブレラに説明をしている。
「そろそろ××××(専門用語)が古くなってきちゃってるから、交換しようねお兄ちゃん。 ○○○○(専門用語)はまだ大丈夫だけど、△△△△(専門用語)の様子も見たかったから、 ちょうど良かったね」
部屋の外には…
「凄いな、ランカ……もうすっかりフロンティアを代表する技術者アイドルになっちまったな……」
「くそっ、あの男のせいでランカがドンドン妙な方向に……!!!」
感嘆するアルトと嘆くオズマ。
そう、あれから数年。
超時空シンデレラと呼ばれたアイドルは勉学を重ね、機械工学の知識と技術を身につけ、サイボーグ研究の技術者になっていた。
「というわけで検査するから……服、脱いで、お兄ちゃん。 え、やだ鼻血…なんで!?やめて、今、作動液の在庫少ないんだよ! もーまた新しいの足さなきゃ。もったいない…」
ランカに渡されたチリ紙でブレラは鼻を拭きながら
「すまない…だが、やはりランカにだけは見られたくない… 他の全然無関係な奴等なら割り切れるが、ランカに検査されて中を見られるなんて…耐えられない」
「えー家族なんだから良いじゃないの。 ていうかお兄ちゃんもあんな服着たり散々ヒトの身体スキャンしておいてそれはないと思うよ…?」
「あれは仕事で仕方なく」
「私も仕事でしてるの!変な風にとらないでっ! 私まで恥ずかしくなってきちゃったじゃない/////…待って!どこ行くの!?」
ブレラはついに実力行使に及んだ。
「ブレラさんが逃げた!捕まえて、お兄ちゃん!アルト君!」
「任せろランカァあああ!」
日頃ランカを奪られてばかりいる恨みをはらさんばかりの勢いで追うオズマ。
「ブレラが本気で逃げて俺らが追いつけるわけないだろ…あ、でも隊長、もう少しで追いつきそうだな…」
と、ブツブツ言いながらも、おざなりに追いかけるアルトがドンドン小さくなってゆく…。
「っ!?夢!!?」
シェリルは飛び起きて不敵に笑った。
「ふふふ、やるわね、ランカちゃん…そんなアイドル新しすぎるわ…私も負けないわよ」
シェリルはランカに負けない斬新なアイドルの在り方は何だろうかと考え始めていた。
≪おしまい≫
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ごめんなさい、どうしてブレラがオープンさせられそうになっているんだろう…でも、そうせずにはいられなかっt(まぁそれもシェリルの夢でしたと言う←)
ランカは○び太じゃなくてド○ミでなんじゃって気がしなくもないのですg(「?」な方は『ドラ○もん 幻の最終回 電池切れ』WEBで検索)
気づいたら一般人少女からシェリルの横に並ぶトップアイドルになってたランカだから…グレイスの横に並ぶのも時間の問題だよねって信じてます!←
…あれ…ウチのランカ強い…?ランカが妙な方向へ行ってるのはブレラのせいじゃなくて私のせいでした…。(ばたり)