まさめご


 

 このくだらなくも美しき世界

 

自分は戦うことしか考えてなかった。
いつしかまわりは敵だらけで。
あいつも、どうせそうだろうと思ってた。
しかし愛は…それまで会ったことがない種類の女だった。

「…めご過ぎる…」

いや、確かに噂で聞いてはいたが。
何?あの生き物…と思わず問いたくなった。
それまで自分のまわりに居たのは年上の、それも強そうな女とか男ばかりだったせいもあるのだろう。
嫁いで来た姫の、あまりの予想を上回る『めごさ』にショックで近付けない日が続く…が。

「良いお天気ですね!」

「…あぁ…」

おそらく縁側か何処か…だったと思う。
政宗がこっそり見守るばかりなので、見かねた周りが『先ずは近くで話せるようになれ』と画策した結果。
はめられて2人きりにさせられてしまったのだ。

「(今日も、めんこい…)」

ちらっと見ながら、そう思う。
沈黙が続きそうだし、思い切って気になっていたことをハッキリさせてみることにする。

「…めごは俺のこと怖くないのか?」

「?…はい。…怖がったほうが良いのでしょうか?」

お望みならばそういう風に努めますが、とでも言出しかねなさそうな様子の姫。
そういえば、どちらかというと怖がるように避けていたのは自分のほうだったじゃないか、と思い出し言い方を変えてみる。

「…そんなことはねーけど…後悔してんじゃねーのか」

幼い頃に言われた言葉は成長しても残る。
特に一時期、絶対的な存在である母親の言葉は。

「ちゃんと両目そろった奴に、嫁ぎたかっただろ」

周囲の者達のためにも、気にしないと決めていたはずなのに。
思いつめるのは自分の身の上。
せっかく明るくなった性格が、また逆戻りしそうになる…。
実際、彼より先に姫と仲良くなった周りの連中は心配しており『姫は全然気にしてないから。大丈夫だから』と、元気づけていたりしたのだが。
気休めだろうとも思っていた。
姫は伊達家に来てから、そんなに日も経たないし。
心の奥底ではどうだか…と、信じていなかった。

「実家に戻るなら今のうちだぜ」

目を合わせないで、そっぽを向いて言う。

「どうしてですか」

驚いて振り向くと、本当にきょとんとした調子の…相変わらずの可愛らしい顔。

「…めごは、まだ まさむね様のことをよく存じ上げておりません。ですのに、別の人に嫁ぎたかったなんて…後悔なんて、まだ考えられません」

そう、だからこそ。見目しか知らないから。
こいつは本当に後悔していないのだろうか…。
いつしか考えをめぐらせながら、じーっと見つめていた。

「…あ…やっぱり、めごは…幸せ者です。まさむね様は…美人さんだと思います、ょ…」

いつもなら、どうせ気を使って言っているのだろうと思うが。
顔を赤らめさせつつ、だんだん俯き小声になりながら言うので、まさか本気で言っているのではと思ってしまう。
(演技だとしたらかなり侮れない女だ)

「…変わった趣味してンだな、めごは…」

「そ、そうでしょうか…まぁ…よく言われますけど。…やはりその、それだけ…お嫌なのですか?…今のお姿が」

「…そりゃあ…」

「…一緒にされたら怒られるかも知れませんが…めごも…不服に思ってきました」

愛が、何か決意したかのように話し出す。
田村に居た頃。
『もし、同じ一人っ子でも姫ではなく男の子であれば…』と家中の者が歎いているのを聞いてしまったことがある。
成る程、私が姫でなければ、そうすれば家も継げたのに…安泰だったであろうに。

「…男に生まれていたらなぁ〜と…」

でも、すでに姫でない私等想像も出来ないし当の親達はそんなことを言わないし…実の親に言うのは何だか攻め立ててもいるようで…言いにくくて誰にも言ったことはなかった。

「めごなんかに、男は無理だ」

意外に思った。
こんなに、羨ましいほど愛らしい顔をして、お姫様教育を受けて来たような奴が。
何の労苦もなさそうな奴が…今の姿は嫌だったと言う。

「はい…自分でも、そういう感じはします」

愛が、苦笑する。

「めごは、女で良かったよ。何より…じゃなきゃ俺の嫁になれないだろ?」

少し照れながら言うと、それまで庭を見ていた愛が驚いてこちらを見た。

「…ありがとう、ございます」

ずっと困った顔ばかりさせていたが…やっと微笑んでくれた。
いつの間にか慰められていたのが慰めてしまい。
向こうもなんだか、それに気づいて申し訳なく思ったのか、

「そうですよね…今、この身体で出来ることを、精一杯やるだけなんですよね!」

よーし!と両手の拳を握りしめる…のがまためごい。

「ん?…あぁ」

自分の話してるんだよな?こいつは…。

「だから、お互い、もう生い立ちのことを愚痴ったら駄目ですよ!罰金一両ですよっ!」

びしっと言われてしまった。

「なんでそうなるんだよ」

別に愚痴ったわけではないのに…いや同じことか?

「えぇっ!?あ…ご免なさい。変な話をしてしまって」

なんだか変なのが来てしまったけれど。
目の前にいるのは一応、政略とはいえ自分が選んだ姫で。
慌てふためく愛を見て、自分の判断は間違ってなかったような気がした。

<おわり…!?お粗末様でしたっ!>

〜☆〜★〜☆〜★〜☆〜★〜☆〜★〜☆〜

桃桜さんに差し上げた伊達夫婦小説(幼少期…!)です。
今更ながら、この頃まだ、ぼんてんまる時代のような…まさむねって名乗ってないような気が…!?
…はい、ご都合主義展開ですね。
というか無駄に長くってすいません…!
外来語覚える前な予定だったので英語しゃべりじゃないです、ね…。
つまりバサラの伊達らしさが、無い!!!(大変な問題)
ちなみに…罰金は、今ではもう二人ともかなりの額が貯まって たりします。

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